言わずと知れたハルヒ最新刊。
SOS団に新入団員?
ハルヒ団長の手による数々の理不尽な試験を突破し、ついに現れてしまった謎の新入団員。
陽気で快活な笑顔の裏に隠された真意とは何なのか。
αとβが交わるそのとき、キョンそしてSOS団と似非SOS団の雌雄は決する。
物語はウルトラCな収束を見せるが、それが「ハルヒ」だと言ってしまえばまぁそうなのかもしれない。何たって「神」なわけだからな。
これまでは仲間と言えど、それぞれの利害関係も絡んで一枚岩と言えないような気がしていたSOS団の結び付き、絆が急速に強まった(ように思える)話だった。
そう思わせたのは間違いなく、クライマックスに古泉が見せた本気だろうな。
『憤慨』あたりからも描かれていたが、この『驚愕』でもキョンのSOS団に対する、そしてハルヒに対する想いがはっきり描かれていて、まるでシリーズ最終巻なのかと思った。前は何だかんだで言い訳をして誤魔化していたが、『消失』以降、自分の想いを包み隠すことがあまりなくなったね、キョン。
自分が「選んだ」世界だから、それもそうか。
さて、次の巻が出るのは一体いつになるだろうね。
第6話「ビジュアル」
ダイエー横浜西口店脇の道を北へ進み、一の橋を渡ると、右手に改装工事中のビルが見える。はて、一体ハマボウルはいつになったら新装開店するのかね、などと思いながらその道をさらに進む。すると、左手に見えるビルの1階にファミレス・ジョナサンはある。
そこに、3人の冴えない男たちが集まっていた。
うむ、他でもない俺たち、俺とハヤトとコージローの素人同人ゲーム製作集団(気取り)、である。
テーブル上に既に食器類はなく、ドリンクバーのコップ、黄色い表紙に猫のイラストが描かれたデリーター社のF3サイズのスケッチブックだけが存在を主張していた。
池袋宣言以降、俺たちは冬コミ出展という共通の目標に向け、確実に動き出していた。
「で、茜ってのはどんな娘なんだ。ちょっと特徴書いてみ」
スケッチブックをハヤトに渡す。
「そうやな、茜は飄々としてるわけや。そんで明るい、そんで……」
スケッチブックには「ひょうひょうとしている」「明るい」「女の子らしい」「紅茶好き」「チビ」といったフレーズが挙げられていく。
呼んでもいない梅雨前線が暖簾から顔を覗かせ始めた6月のある夜、そこではキャラデザ打ち合わせが行われていた。
ノベルゲームをゲームたらしめている要素のひとつにビジュアル面があるのは言うまでもないことだろう。
シナリオとともに、ビジュアル、中でもキャラクターデザインがその作品の評価に対して占めるウェイトは小さくない。
そのビジュアルに関して、参考までにいくつかのノベルゲームをプレイした結果、どうしても納得できないことが俺にはあった。
それは……。
「そういや、ホントにあの人に衣装設定頼んだん?」
不意にコージローが俺に問う。
「え、あぁ」
まぁ、そりゃ驚くのも無理はないだろうな。俺だってあのときの自分の決断と行動には少しばかり驚いたさ。
あのメールの送信ボタンを押すまでにどれだけの逡巡と葛藤があったか。
だが、俺は自分の納得できないことはそのままにしておけない性質なんでね。つまり、「いつもキャラが同じ服を着てる」ってのは許しがたいんだ。
だからこそ、女性キャラの多いこの『Calendar(仮)』の衣装設定にイシガキさんを誘ったんだよ。
つづく
ダイエー横浜西口店脇の道を北へ進み、一の橋を渡ると、右手に改装工事中のビルが見える。はて、一体ハマボウルはいつになったら新装開店するのかね、などと思いながらその道をさらに進む。すると、左手に見えるビルの1階にファミレス・ジョナサンはある。
そこに、3人の冴えない男たちが集まっていた。
うむ、他でもない俺たち、俺とハヤトとコージローの素人同人ゲーム製作集団(気取り)、である。
テーブル上に既に食器類はなく、ドリンクバーのコップ、黄色い表紙に猫のイラストが描かれたデリーター社のF3サイズのスケッチブックだけが存在を主張していた。
池袋宣言以降、俺たちは冬コミ出展という共通の目標に向け、確実に動き出していた。
「で、茜ってのはどんな娘なんだ。ちょっと特徴書いてみ」
スケッチブックをハヤトに渡す。
「そうやな、茜は飄々としてるわけや。そんで明るい、そんで……」
スケッチブックには「ひょうひょうとしている」「明るい」「女の子らしい」「紅茶好き」「チビ」といったフレーズが挙げられていく。
呼んでもいない梅雨前線が暖簾から顔を覗かせ始めた6月のある夜、そこではキャラデザ打ち合わせが行われていた。
ノベルゲームをゲームたらしめている要素のひとつにビジュアル面があるのは言うまでもないことだろう。
シナリオとともに、ビジュアル、中でもキャラクターデザインがその作品の評価に対して占めるウェイトは小さくない。
そのビジュアルに関して、参考までにいくつかのノベルゲームをプレイした結果、どうしても納得できないことが俺にはあった。
それは……。
「そういや、ホントにあの人に衣装設定頼んだん?」
不意にコージローが俺に問う。
「え、あぁ」
まぁ、そりゃ驚くのも無理はないだろうな。俺だってあのときの自分の決断と行動には少しばかり驚いたさ。
あのメールの送信ボタンを押すまでにどれだけの逡巡と葛藤があったか。
だが、俺は自分の納得できないことはそのままにしておけない性質なんでね。つまり、「いつもキャラが同じ服を着てる」ってのは許しがたいんだ。
だからこそ、女性キャラの多いこの『Calendar(仮)』の衣装設定にイシガキさんを誘ったんだよ。
つづく
『驚愕』のために急いで読みましたシリーズ第2弾。
桜咲く季節。SOS団メンバーは全員無事に進級を果たす。
いつもと変わらぬ調子で新入団員勧誘活動を繰り広げるハルヒを横目に見ていたキョンに古泉が告げる、「『あの日』以来、《神人》の出現頻度が高まっています」と。
「あの日」、キョンが会った人物、つまりハルヒの潜在的不機嫌の元凶となった人物の周囲に集まる未来人、超能力者、宇宙人的存在が、日常をさらに非日常に変えていく。
『驚愕』に続くシリーズのいわば序章に近いポジション。 非常に気になる場面で突如終了。何一つ謎が明かされぬまま、消化不良感だけが残る。
この状態で『驚愕』発売まで4年も待たされたとはそれはもう相当な焦らされ方だな。昔、友人が「いつまで分裂したままなんだ」と言っていたのもさもありなん。
大学時代に買ったのに、未だに読み終わってなかったハルヒシリーズ。『驚愕』購入を機にやっと読みました。
「編集長★一直線!」と「ワンダリング・シャドウ」の中編2本立て。
・編集長★一直線!
文芸部存続のためには、部としての正式な活動、つまり会誌の発行および頒布が必要だとする要求をハルヒに突きつける生徒会長。
かくして、SOS団およびその仲間たちはハルヒ編集長主導の下、各々が小説を書かされることになるのであった。
・ワンダリング・シャドウ
SOS団にひとつの依頼が持ち込まれる。依頼人はキョン・ハルヒのクラスメートである阪中。愛犬・ルソーがどうしても近寄ろうとしない地域に幽霊でもいるのではないかと話す。
懐疑的だったキョンがそこで出会ったものとは……。
「編集長★一直線!」感想
朝比奈さんの童話はまあいいとして、このエピソードのポイントは長門の私小説めいた「幻想ホラー」とキョンの引っかけ「恋愛小説」だろう。
引っかけポイントは種明かし前にオチがわかったけど、古泉の指摘がなかったら違和感はありつつもスルーしてたかもな。
黄緑さんの再登場および正体の発覚という新事実はあるものの、全体の中ではそれほど重要でないエピソードという印象。
「ワンダリング・シャドウ」感想
これといって大きく盛り上がるところのないお話。展開・内容ともに「ミステリック・サイン」に近い。
「消失」以降、キョンがハルヒたちとの日常を受け入れ、またそれに愛着を感じていることがよくわかる後半の描写が印象的。