Y's DIARY

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第7話「イシガキさん」

 第7話「イシガキさん」

 イシガキさん、彼女は俺と同じゼミに所属する女性だ。160センチを少し超えるくらいのどちらかと言えば長身に、淡い栗色に染めた髪を肩下まで伸ばしている。アニメやマンガが好きで、ガツガツと自己主張するような性格ではなく、ファッションに無頓着ということはないけれど、それほど容姿に派手さはない。だけど、どこか魅力的な女性。俺が彼女を評するならば、そういうことになるだろう。

 俺は彼女と話すときは妙に緊張してしまった。もともと異性と話すことにあまり慣れていないこともあるが、それだけではなかった。
 早い話が、俺は彼女に対して少なからぬ好意を抱いていたわけだ。

 「衣装設定にはこだわりたい、だからこそイシガキさんに協力してほしい」という思いがあったとは言え、彼女を自主製作ゲームのスタッフに誘う、という行為がいかにハードルの高いものであったかは想像に難くないであろう。いや、想像できなくてもよい。実際、そのときの俺にとって、衣装設定を依頼するメールを送信するそのボタンを押すには、相当な勇気を必要とした。

 実際のところ、衣装設定云々ではなく「彼女を何らかの形で関与させたい」という思いが先にあったのではないか、という指摘もあるかと思うが、実際のところそのあたりは定かではない。
 また、彼女に依頼メールを送ったのが夜だったか朝だったか、すぐに返信があったか待たされたか、それらもあやふやでよく覚えていない。

 ただ、返ってきたメールの内容は覚えている。
 「面白そう!やります!」

 メールを確認したとき、自分の口角が上がるのを抑えられなかった。要は、嬉しくてニヤニヤしちゃったわけである、この男は。

 こうして、我々同人ゲーム製作集団にはスタッフが1人加わり、4人となったのであった。とは言え、イシガキさんはあくまで協力スタッフという形であり、メインで活動するのは相変わらず冴えない男連中、俺とハヤトとコージローの3人である。

「いや、しかしマツモトくんがそんなことするとはねぇ」
 ジョナサンのテーブルに座るコージローが少しにやけながら言う。
 「マツモトくん」というのは新キャラではない。俺のことだ。ハヤトとコージローはもともと俺の下の名前を呼び捨てで呼んでいたのだが、何故かいつからかこう呼ぶようになっていた。

「ま、それはいいやんか」
 スケッチブックに落書きのような絵を描きながら、話を逸らす。
「それより、俺らのサークル名考えようぜ。というか、もう考えてあるけど」

 つづく

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30代男。
三度の飯より鷹命。

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