Y's DIARY

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半月の夜

「今日遊ぶか?」

 メールが届いた。

「じゃあ、たこ焼き食い行かん?」

 メールを返した。



 夜、友人Nの運転する車で出掛けることになった。この友人Nというのは小学生の頃からの友人で、今は社会人として働いている。家が近所ということもあって、柳川に帰ってきた際には必ずと言っていいほどこのNと2人でどこかに出掛けるのが定番となっている(というか、半ば強制的に定番にしている)。

 向かったのは、たっちゃん堂。ここは、高校時代によく友人と通っていたたこ焼き屋である。当時、俺たちは「どっかひとつくらい『行き付けの店』とかあった方が青春っぽいんじゃないか?」とか、そんなことを考えていた。果たして、たっちゃん堂が俺たちの『行き付けの店』になったわけであるが、ただそれだけが理由ではない。実際、この店のたこ焼きが美味しかったのだ。自然と俺たちは、学校帰りに「たこ焼き食い行くか?」と言うようになっていた。高校を卒業してからも、柳川に帰ってきた折には、ほとんど必ず1回はこの店にたこ焼きを食べに行くことにしている。その度に、店のおじさんとおばさんは変わらぬ笑顔で迎えてくれた。今回はおばさんはいなかったが、おじさんは変わらなかった。ただ、少しこれまでと変わった点があった。
 まず、店の場所である。これまでは、くすりのありあけ(薬局・いつの間にか閉店していたが)の駐車場にあったのが、その隣のダイレックス(ディスカウントショップ)の駐車場脇に移動していた。代わりに、くすりのありあけ跡地には、ドデカいソフトバンクショップが建っていた。変わったのは店の場所だけではない。店の敷地面積が狭くなったせいで、店内の飲食スペースがなくなってしまっていたのである。さらにそれも関係してか、たこ焼き+ポテト+ジュースというお得セットも中止になっていた。つまり、持ち帰り専門店になってしまっていたということだ。これは非常に残念だった。高校時代は、ソースたこ焼きのセットを注文して、それができるまで店内に置かれたマンガを読んだり(レモンハートというマンガをよく読んだものだ)、たこ焼きを食べながらおじさん・おばさんと話をしていたものだが、それができなくなってしまった。あぁ、そういえば店内にはいつもNHKラジオが流れていて、ダルビッシュが熊本工業相手にノーヒットノーランを達成した試合をたこ焼きを食べながら聞いていたなぁ。そういった数々の思い出ある店内スペースがなくなってしまったということは切ないことだ。おじさんに「場所移ったんですね」と話すと、「ソフトバンクが土地(くすりのありあけ跡地)全部買い取っちゃったからねぇ」と言っていた。無駄に広い駐車場を作るくらいなら、今まで通り「たっちゃん堂」の敷地は残してあげてもよかったじゃないか、ソフトバンク。
 いつものオーダー、「ソースたこ焼き」を注文。車中で食す。味の方は変わらず美味だった。安心。

 その後、「さて、これからどこ行こうか」と言うと、Nが「えっ、たこ焼き食べるだけじゃなかったん?」と返してきた。どうも、これだけが目的だと思っていたらしい。
「そんなわけないやろ」
「お前、ただたこ焼き食い行くための足に(俺の車&運転)使っただけやろもん?」
「まぁ、それもあるけどいいやんか」
 ということで、Nをうまく丸めて(?)、いざ出発。

「就職は? どうすんの?」
「まぁ、そうだな…」
「こっち、帰ってこんか。誰でんおらんごつなったけん、遊ぶ相手のおらんぞ」
「まぁ…そうだな…」

 本当に、俺はどうなるんだろう。いや、そんな受身ではいけないのだ。俺はどうするんだろう。どうすべきだろう。今になってもよくわからない。

 着いたのは、大牟田にある楽市楽座(ゲームセンター)。Nと2人でどこかに出掛けるといえば、まずゲーセンなのである。そして、必ずUFOキャッチャーなのである。しかし、その店ではいまいちUFOキャッチャー魂をくすぐるような台がなかったため、久留米へ移動することにした。ちなみに、運転は常にNである。自分は運転しないくせに、あれこれ言う俺は全く横着者だ。

 途中、道を間違えながらも、ナビのおかげで無事久留米の楽市楽座に到着。その車中で、先日俺が経験した人身事故の話をしたのだが、そのNも「(面白半分で外の様子を覗いたり、笑ったりしてるようなやつは)最悪だな」と言っていた。俺の考えの方が異端的なのかもしれないなどと少し思っていたので、安心した。

 さて、UFOキャッチャーである。自分で言うのも何だが、俺はUFOキャッチャーには少しばかり自信がある。昔は1プレイ100円の小物ぬいぐるみを何個も獲っていたのだが、最近は1プレイ200円の大物狙いにシフトしている。何故かと言うと、「小物は簡単に獲れちゃうから」である。それに引き換え、大物はなかなか難しい。さらに1プレイ200円と、リスクも高い。だが、それがいい。その分、大物を獲ったときの興奮は、小物を獲ったときのそれの何倍にもなるのだ。前回、5月に行ったゲーセンでは、「森のももんが」なるキャラクターの50センチ超のぬいぐるみをゲットした。それが今、横浜の自宅にあって、たまに抱き枕代わりにしていることは、決して誰にも言わないつもりだ。
 そんなわけで、今回も1プレイ200円の大物を狙った。ちょうど可愛らしいスヌーピーのぬいぐるみがあったので、それに狙いを定める。…が、900円使っても(500円3プレイ&200円1プレイ×2)びくともせず、断念。悔しい。負けた。
 次に、リロ&スティッチなるディズニー映画のスティッチというキャラクターのぬいぐるみに狙いを定める。ディズニー嫌いの俺だが(正確に言えば、ディズニー社が嫌い)、まぁ仕方ない。500円を入れて3プレイする。正直、簡単に獲れると思っていた。…が、これまた難敵で、なかなか動かない。あぁ、どうしよう。時間も時間だし、持ち金もそう多くない。今回は諦めるか? 俺はそんなことを考えた。が、いくら「UFOキャッチャーは夢を買うゲームだ」と考える俺でも、何も獲れずに帰ることは「敗北」を意味する。夢は手にするものだ! このまま帰るわけにはいかん! 何かよくわからん理論だが、とにかく再チャレンジした。再度500円投入。
 1プレイ目、慎重に慎重を期してアームの狙いを定める。よし! いいぞ! スティッチの体が大きく出口方向へ傾いた。
「ここで焦っちゃいかん。焦って、反対方向に倒したら全てパーだ」
 などということをNと話し、いざ2プレイ目。3プレイ目で決着をつけるために、ここは大事。…だったのだが、何とアームの操作をミスって反対方向へ傾くスティッチ! 嘆く俺(とN)!
 しかし、ここで諦めてはいかん。最後の1回で一気に獲れることもある。そう気を持ち直して、3プレイ目。それまでの作戦は変えず、首に対して垂直にアームを入れ、頭と胴体を一気に掴む。ググッと出口方向に傾くスティッチ!

キタ―――――(°∀°)―――――!?

 と思いきや、

キテネ―――――('д`;)―――――!!

 あと一歩のところで踏み止まるスティッチ!

 が、明らかにもう一押しすれば獲れる状態になったので、もう200円投入して、無事にゲット。
スティッチ

 全く、手強いやつだったYO!! でも、全部で2000円くらい使ってこれひとつというのは、俺にとっては「負けに等しい引き分け」である。まぁ、「負け」なかっただけでもいいのだが。

 この俺のUFOキャッチャーの腕(たぶん2級くらい。どのくらいの段位があるのかは不明)は、3次元の彼女ができたときに役立つかもしれんとか思っていたりする。というか、実際に以前彼女がいたときに何個もぬいぐるみを獲ったような記憶がある。
 あ、そういえば、どういう話の流れだったか、俺が岬ちゃんの話をしたら「うわ~、引くわ~。オタクオタク~」と、笑いながらNが言っていた。全く、評価されて光栄だな。

 そんなこんなで、ぬいぐるみをゲットして満足した俺たちは家路についた。途中、セブンイレブンに寄ってもらった。
「何買うと?」
「焼き鳥でも買おうかと」
「それでビール飲むっちゃろ?」
「まぁそうだ」
「おっさんやんか」
 そうは言っても、やめられない、とまらない~、カルビーかっぱえびせん♪ かっぱえびせんは別に好物じゃないが。
 焼き鳥はなかったので、チーズ鱈等々を買って、家まで送ってもらう。

 今度はゆっくり居酒屋でも行こうぜ、Nはそう言った。そうだな、行きたいな、と俺は答えた。今度帰ってくるとしたら、年末だな。年末が楽しみだ。もしかしたら、その頃には俺の生活にも少し変化が起こってるかもな。

 妙に明るい空に、妙に大きな半月が出ていた夜だった。
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30代男。
三度の飯より鷹命。

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